METAR アカデミー · 基礎

METAR の読み方 - グループごとに解説

ワルシャワ・ショパン空港の実際の通報をグループごとに分解。地点略号から TREND 予報まで、換算式と計算ツール付きで解説します。

14 分で読めます 更新日:

適用範囲:全世界(ICAO)。根拠:ICAO 標準(第 3 附属書)- 世界中の空港で同じ書式。

要点

  • METAR は観測です。予報ではなく、観測した時点の天気を表します。飛行場予報は TAF です。
  • グループは常に同じ順番です:地点、UTC 時刻、風、視程、天気現象、雲、気温、気圧、補足。
  • METAR の風向は、風が吹いてくる方向を真方位で示します。
  • 気温と露点の差から雲底高度を推定できます:1 °C あたり約 400 ft。
  • 雲の高さは飛行場からの高さを 100 ft 単位で、時刻は常に UTC で示します。
目次
  1. METAR とは
  2. 通報全体を 1 枚の図で
  3. ヘッダー:種類・地点・時刻
  4. 風
  5. 視程と RVR
  6. 現在天気
  7. 雲
  8. 気温と露点
  9. 気圧 QNH
  10. 補足グループと TREND
  11. よくある間違い

METAR とは

METAR(Meteorological Aerodrome Report、定時飛行場実況気象通報)は、飛行場で観測した天気を定時に伝える通報です。書式はシカゴ条約第 3 附属書(ICAO Annex 3)で厳密に定められているため、世界中のどの空港でも、パイロット、運航管理者、管制官が言語に関係なく同じように読むことができます。

通報は観測時点の状態を表します:風、視程、天気現象、雲、気温、気圧。交通量の多い空港では、2 時間先までの短い TREND 予報が付きます。その後 24〜30 時間の詳しい予報は別の通報で、記事 TAF 予報で解説しています。

通報全体を 1 枚の図で

ワルシャワ・ショパン空港で、午後にしゅう雨が通過しているときの通報を例にします。各グループに番号を付けたので、この後の解説で順番に見ていきます。

通報

1 METAR 2 EPWA 3 091230Z 4 24012G25KT 5 210V280 6 6000 7 -SHRA 8 BKN014CB 9 SCT030 10 12/09 11 Q1003 12 RERA 13 TEMPO 3000 SHRA BKN009
  1. 1 METAR - 通報の種類(定時観測)
  2. 2 EPWA - 空港の ICAO コード - ワルシャワ・ショパン
  3. 3 091230Z - 9 日、12:30 UTC
  4. 4 24012G25KT - 風向 240°、12 kt、ガスト 25 kt
  5. 5 210V280 - 風向が 210°〜280° で変動
  6. 6 6000 - 視程 6000 m
  7. 7 -SHRA - 弱いしゅう雨
  8. 8 BKN014CB - 1400 ft に雲量多い、積乱雲
  9. 9 SCT030 - 3000 ft に散在する雲
  10. 10 12/09 - 気温 12 °C、露点 9 °C
  11. 11 Q1003 - QNH 1003 hPa
  12. 12 RERA - 直前の雨
  13. 13 TEMPO 3000 SHRA BKN009 - TREND:一時 3000 m、しゅう雨、BKN 900 ft
図 1. EPWA の METAR をグループごとに分解したもの。グループの順番は常に同じです。

METAR は定時観測を示し、通常 30 分または 1 時間ごとに発表されます。定時の間に天気が大きく変わったとき(視程の低下や雷電の発生など)は、同じ形式の SPECI が発表されます。

EPWA は空港の 4 文字の ICAO コードです。1 文字目は世界の地域、2 文字目は国を表します(E - 北ヨーロッパ、P - ポーランド)。コードについて詳しくは記事 ICAO・IATA 空港コードをご覧ください。

091230Z は日(09)と観測の時・分(12:30)で、UTC を Z(Zulu)で示します。月と年は通報に含まれず、文脈から判断します。時刻と風の 間には AUTO(完全自動観測)や COR(すでに発表された通報の訂正)が入ることがあります。

4〜5. 風

24012G25KT は dddffGggKT という形です:風向 3 桁、風速 2 桁(または 3 桁)、必要に応じて G とガスト、最後に単位。風向は風が 吹いてくる方向で、真北から測った度数を 10° 単位に丸めたものです。

風配図:風向 240 度、風向は 210 度から 280 度の間で変動 N E S W 210° 280° 240°
図 2. 風向 240°、風向変動 210°〜280°(グループ 210V280)。
表記意味
24012KT240°、12 ノット
24012G25KT同上、ガスト 25 kt まで
210V280風向が 210° と 280° の間で変動
VRB03KT風向不定、3 kt
00000KT静穏
27008MPS270°、8 m/s(ロシア、中国など)

ガスト(G)は、最大風速が平均風速を 10 kt 以上上回るときに通報されます。変動グループ dddVddd は、風速 3 kt 以上で風向が 60°〜180° 変動するときに付きます。VRB は、風が非常に弱いとき、または変動が 180° 以上のときの風向不定を表します。

計算式 · 風速の換算

km/h = kt × 1.852

m/s ≈ kt ÷ 2

kt
ノット - 1 時間に 1 海里(1852 m)
m/s
正確には m/s = kt × 0.5144

例: 25 kt × 1.852 = 46 km/h ≈ 13 m/s。

6. 視程と RVR

6000 は卓越視程(メートル)です。常に 4 桁で書かれ、上限と下限には特別な意味があります:

表記意味
999910 km 以上(表記の上限)
0800800 m
000050 m 未満
4000 1500SW卓越視程 4000 m、最短視程は南西方向に 1500 m
CAVOK視程・天気現象・雲のグループの代わりに使う - 詳しくは雲の記事で
3SM、P6SM米国:3 法定マイル、6 マイル超
計算式 · 法定マイルからメートルへ

メートル = SM × 1609

SM
法定マイル(statute mile)。米国とカナダで使用

例: 3 SM × 1609 ≈ 4800 m、1/2 SM ≈ 800 m。

視程が悪いとき(1500 m 未満)は、RVR(滑走路視距離、接地帯で測定)も通報されます。例:R33/0550U は滑走路 33 の RVR が 550 m で上昇傾向 (U - 上昇、D - 下降、N - 変化なし)。接頭辞 P は「より大きい」、M は「より小さい」を表します(例: R11/P2000)。

7. 現在天気

-SHRA は弱い(-)しゅう雨性(SH)の雨(RA)です。天気現象のグループは強度、特性、1 つ以上の現象から成り、1 通の 通報に最大 3 グループまで入ります。グループがなければ、観測時に顕著な現象はなかったということです。すべての略語の一覧は記事 天気現象コードにあります。

8〜9. 雲

BKN014CB は、飛行場上 1400 ft に雲底がある雲量多い(空の 5〜7/8)雲で、積乱雲によるものです。SCT030 は 3000 ft から散在する雲(3〜4/8)です。 高さは飛行場の標高からの100 ft 単位で書きます:014 = 1400 ft ≈ 430 m。

最も低い BKN または OVC の層がシーリング(雲高)となり、シーリングと視程から飛行カテゴリー(VFR、MVFR、IFR、LIFR)が 決まります。オクタ、シーリング、カテゴリーについては記事 雲・視程と飛行カテゴリーで詳しく解説しています。

10. 気温と露点

12/09 は気温 12 °C、露点 9 °C で、整数に丸めた値です。マイナスの値には M を付けます:M03/M07 は −3 °C と −7 °C。露点とは、 水蒸気が凝結し始めるまで空気を冷やしたときの温度で、気温に近いほど空気は湿っています。

両者の差(気温露点差)は、通報全体の中でも特に実用的な数字です。積雲ができる高さを推定でき、霧の予兆にもなります:

計算式 · 積雲の雲底高度

H [ft] ≈ (T − Td) × 400

H
飛行場からの雲底の高さ
T
気温 [°C]
Td
露点 [°C]
400
差 1 °C あたり ft(≈ 122 m) - 気温減率の違いから導いた目安

例: (12 − 9) × 400 = 1200 ft - 積乱雲の雲底を 1400 ft とする通報とおおむね一致します。

計算式 · 相対湿度(Magnus の式)

RH = 100 × e^(17.625·Td/(243.04+Td)) ÷ e^(17.625·T/(243.04+T))

例: T = 12 °C、Td = 9 °C → RH ≈ 82%。

計算ツール

通報から雲底高度と湿度を計算

気温露点差 T − Td

3.0 °C

雲底高度 ≈

1,200 ft

メートル換算 ≈

366 m

相対湿度

82 %

霧や低い雲のリスク

やや高い

結果は記事の計算式による訓練用の概算です。航空機の飛行規程や公式のブリーフィングの代わりにはなりません。

11. 気圧 QNH

Q1003 は QNH - 海面に換算した気圧(ヘクトパスカル、整数に切り捨て)です。これに規正すると、地上の高度計は飛行場の標高を示します。米国と カナダでは水銀柱インチを使います:A2962 は 29.62 inHg です。

計算式 · hPa と水銀柱インチ

hPa = inHg × 33.864

inHg = hPa ÷ 33.864

1013.25 hPa
= 29.92 inHg - 国際標準大気 ISA の海面気圧

例: Q1003 ÷ 33.864 = 29.62 inHg、米国式の表記では A2962。

気圧が低く気温が高いと、飛行機は実際より高い所にいるように「感じ」ます。離陸滑走が長くなり、上昇率が下がります。これを表すのが次の 2 つの量です:

計算式 · 気圧高度と密度高度

PA = 標高 + (1013 − QNH) × 27

DA ≈ PA + 120 × (T − T_ISA)

PA
気圧高度 [ft]、27 ft ≈ 地上付近で 1 hPa あたりの高度差
DA
密度高度 [ft] - 飛行機が実際に「飛んでいる」高さ
T_ISA
標準気温:15 °C − 1000 ft ごとに 2 °C

例: EPWA(362 ft)、QNH 1003、24 °C:PA ≈ 362 + 10 × 27 = 639 ft、T_ISA ≈ 13.7 °C、DA ≈ 639 + 120 × 10.3 ≈ 1870 ft。

計算ツール

QNH を換算して飛行場の密度高度を確認

QNH(インチ)

A2962

1013 との差

-10.3 hPa

気圧高度

639 ft

密度高度

1,872 ft

結果は記事の計算式による訓練用の概算です。航空機の飛行規程や公式のブリーフィングの代わりにはなりません。

12〜13. 補足グループと TREND

気圧の後に補足グループが続くことがあります。RERA(recent rain)は、過去 1 時間に雨が降ったが今はやんでいることを示し、滑走路の状態を判断する うえで重要です。ほかに WS R33(滑走路 33 への進入時のウインドシア)や滑走路状態のグループもあります。

最後に 2 時間先までの TREND 予報が付きます:NOSIG(大きな変化なし)、BECMG(次第に変化)、TEMPO(一時的な 変化)。この例の TEMPO 3000 SHRA BKN009 は、しゅう雨で視程 3000 m、シーリング 900 ft という一時的な悪化を予告しています。RMK(備考)には 国ごとの情報が入ります。米国では、正確な気温や海面気圧などです。

METAR を読むときのよくある間違い

  1. UTC ではなく現地時刻と思い込む。 1230Z は日本時間では 21:30、ポーランドの夏時間では 14:30 です。
  2. 風向を「吹いていく方向」と取り違える。 240° は南西から北東へ吹く風です。
  3. 雲の高さを海面からと考える。 BKN014 は海面ではなく飛行場から 1400 ft です。
  4. 9999 を「ほぼ 10 km」と考える。 10 km 以上という意味で、視程が 50 km のこともあります。
  5. RE を現在の天気と考える。 RETS はすでに終わった雷電です。
  6. TREND を見落とす。 通報の最後の TEMPO は、1 時間後の進入で何が待っているかを伝えるため、観測そのものより重要なこともあります。

準備はできましたか?EPWA の最新の通報を開いて自分で読んでみて、その下のデコード結果と比べてみましょう。

よくある質問

METAR はどのくらいの間隔で発表されますか?

多くの飛行場では 30 分ごと(例:毎時 00 分と 30 分)または 1 時間ごとです。定時の間に天気が大きく変わると、同じ形式の特別観測報 SPECI が発表されます。

METAR は現地時刻で書かれていますか?

いいえ。METAR と TAF の時刻は常に UTC で、Z(Zulu)で示されます。日本時間は UTC+9 です。ポーランドでは夏は UTC+2、冬は UTC+1 です。

METAR の 9999 はどういう意味ですか?

視程 10 km 以上という意味です。これは表記の上限で、それ以上の値は通報しないため、9999 はちょうど 9999 m という意味ではありません。

QNH と QFE の違いは何ですか?

QNH は海面に換算した気圧で、これに規正すると地上の高度計は飛行場の標高を示します。QFE は飛行場の高さでの気圧で、高度計は 0 を示します。METAR に載っているのは QNH です。

通報の最後の NOSIG はどういう意味ですか?

No significant change - 今後 2 時間に大きな変化は予想されないという意味です。NOSIG は、大きな飛行場の METAR に付く TREND 予報の最も短い形です。

実際に試してみましょう

知識を定着させる一番の近道は、実際の通報を読むことです。METAR や TAF をデコーダーに貼り付けるか、地図を開いて近くの空港の状況を比べてみてください。

教育用の資料です。飛行訓練、公式の気象ブリーフィング、AIP の代わりにはなりません。例として挙げた通報は形式上は本物ですが、現在の天気を示すものではありません。

アカデミーのほかの記事

すべての記事 →